クライミング講習会に画期的なモニタリングシステムを導入しました。
皆さんはクライミング講習会に何を期待して参加しますか?
- ガイドの巧みな技を習得したい?
- 自分の苦手分野を克服したい?
- 何だかよく分からないけど、我慢して通っていれば何かが上達するはず?
様々な期待があって、皆さんはクライミング講習会に参加されることと思います。
そして迎える当日、ガイドが岩のルートにトップロープを張って、お客様が淡々とそのルートを登り、登れれば「やった~」、登れなければ「悔しい」という思いのみを背負って帰路に就いていたりしませんか?
私が今一番皆さんに提供したいことは、講習会を経て「今日は新しい発見があり、次への可能性が見えた。今の私は昨日の私を越えた」と成長を感じて頂くことです。
その為に新しく画期的なシステムを導入し、今後のクライミング講習会を進めていきます。

新システム導入までの道のり
既存の講習会では何かが足りない、長らく私はこのことに頭を悩ませてきました。
いくらあの手この手で説明をしても、できない物はできない。言葉と模範演技だけでは、お客様へアドバイスを伝えることに限界がありました。
私の身長は185㎝あり、お客様とのリーチ差が腕1本分にも及ぶことがよくあります。いくら私が模範演技をしたところで、私が使えるホールドとお客様の使えるホールドは全く違います。そこには何の普遍性も再現性もありません。また、人の関節可動域は人それぞれなので、「そんな動きはできない!」ということも良くあります。
せっかくお客様の貴重な1日を頂戴しておきながら、登った疲労感しか土産にお渡しできないのは、とても悩ましいことでした。クライミング講習会で、私はお客様に何を提供できるのだろうか。河川敷を歩きながら、よくそんなことを考えていました。そしてある時ふと、少年期の自分を思い出しました。
自宅から10分のスキー場で、スキーの練習に明け暮れる日々。滑っている本数はかなり多いのに、なかなか上達しないことが悩みでした。
そんな折、日本の家電量販店にVHSカメラ(今では死語ですね笑)が並び始めました。これは家庭用の動画撮影カメラのことです。
親のすねをかじるのが得意技だった放蕩息子は、両親にしつこくお願いをして、VHSカメラを購入してもらいました。さてそのカメラをもっていざスキー場へ。
妹に撮影を頼み、早速自分の滑りをカメラにおさめてみる。するとどうでしょう。私が想像していた、“力強くもエレガント”な滑りは、実はキリンがノソノソ草を食んでいるような、どうしようもなくドンくさい滑りであることが分かったのです。この時の衝撃は今でも忘れられません。
それから撮っては確認・分析・改善の繰り返しを続けました。その結果、次第に想像していた“力強くもエレガント”な滑りに、少しずつ近づくことができたのです。
「これはクライミングの練習にも同じような効果をもたらせるはずだ」
そう閃いた数分後に、タブレット端末をポチっていました。

講習会におけるモニタリングの手順
①カメラとタブレット端末の組み合わせで、登った直後に動きの確認
お客様が登っている姿を、三脚に据えたカメラで動画撮影します。そして登り終えて地面に降りてきたら、すぐさまタブレット端末にて一緒に動画を見て動きを確認します。
②体の使い方を細やかに分析・考察
動画を見ながら、手足の使い方や重心移動方法、ホールド選びなどを分析し、失敗の根本原因を探ります。
③次回トライの作戦立て
分析を基に、次のトライに向けて作戦を立てます。
こうしてクライミング後、体が自分の動作を鮮明に覚えている間に、動画で動きを確認することは、クライミングの上達を飛躍的に効率化してくれます。
自分の視点で捉えている身体像と、離れた場所から捉えた身体像を突き合わせることによって、不要な物と必要な物が明確に浮かび上がってくるのです。
意識的に大きくやったつもりの動作が、実はそれほど大きくもなかったということがあります。さらに自分では気づかなかったクセも見つけられます。
そして自分の動きを脳と身体でよくよく理解し、次のトライに向けて最適な方法を見つけ出すのです。
これが私のクライミング講習会で行う、新しいモニタリングシステムの一連の流れです。

まとめ
私の少年期では、VHSカメラの小さく粗いモニターで確認するしか方法はありませんでした。しかし現在は違います。小さなカメラで撮影したら、即タブレット端末にデータを送り、大きく鮮明なモニターで確認作業ができるようになりました。
これらのデジタル機器を利用して、お客様は第二の視点から自分の登りを振り返ることができます。そしてお客様だけではなく、私も一緒に確認・分析作業をすることで第三の視点を交え、上達への最短距離を見つけ出すことができます。
こんな道のりの末、私の主催する講習会では今後この新しいモニタリングシステムを利用することになりました。名付けて「Vision Support System」。
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